裁判情報をインターネット上で公開することによる不法行為の成否について

 当サイトでは、主に情報公開請求によって入手した公文書情報を掲載するページを設けていますが、一部資料において裁判情報における当事者の氏名等が掲載されたままである事実がありましたので、この点について違法性の検証をした上で、適正・適法なサイトの運営に努めていくためにも、見解を公表しています。

 過去の判例


 京都地判平成29年4月25日(平成27年(ワ)2640号)およびその控訴審である大阪高判平成29年11月16日(平成29年(ネ)1441号)によれば、以下のように判示されています。
 裁判所ウェブサイト搭載(PDF)(第一審のみ)。

第一審:

 原告が本件訴訟の原告である事実及び本件仮処分事件の債権者である事実は、周知のものとはいえず、一般人を基準として、他人に知られることで私生活上の平穏を害するおそれがあることは否定できず、プライバシーとして法的保護の対象となるということはできる。
 しかし、裁判の公開は、司法に対する民主的な監視を実現するため、絶対的に保障されるべきものであり(憲法82条1項)、当事者の権利義務を確定する訴訟については、当事者の氏名も含め、当然に公開が予定されているものである(民事訴訟法91条、312条2項5号)。仮処分は、必ずしも公開の手続を予定していないが(民事保全法3条、5条)、本案訴訟を前提とするものであるから(同法37条)、その内容については秘匿すべき情報とはいえない。そうすると、原告は、本件訴訟を提起し、本件仮処分事件の申立てを行ったことによって、本件訴訟の原告及び本件仮処分事件の債権者として、氏名を他者に知られることを受忍すべきものといえる。また、本件訴訟及び本件仮処分事件において審理の対象となっている情報は、特に私事性、秘匿性が高いものとはいえず、原告の氏名と結びつくことによって、原告の私生活上の平穏を著しく侵害するものとはいえない。このことは、不特定多数人を開示の相手方とし、情報の拡散性、情報取得の容易性を特徴とするインターネットにおける掲載行為においても、同様である。
 したがって、本件掲載行為ABのうち、原告の氏名を掲載した部分については、受忍限度の範囲内であり、違法性はないというべきである。

本件掲載行為A:原告の氏名,住所,電話番号及び郵便番号が記載された(略)の書類を掲載し(た行為)
本件掲載行為B:原告の氏名,住所,電話番号及び郵便番号が記載された(略)の書類を掲載し(た行為)

第二審:
 第一審に加えて、原告の氏名についても、本件裁判情報サイトから削除するよう命じた。

→以上のことから、裁判情報については、氏名、住所、電話番号及び郵便番号を掲載してはならないが、その他の情報については掲載しても問題は無いものと捉えることができます。
 そのため、本サイトでは、判例に基づいた対応を行なっています。

参考:星野豊(2018),「裁判情報のインターネット公開による不法行為の成否」,『筑波法政』(75), pp.123-130.
「裁判情報のインターネット公開による不法行為の成否」(PDF)


おことわり:
 このWEBサイトのドメインとなっている「kocho-shine」は、『鬼滅の刃』鬼殺隊の「柱」として活躍する女性である「胡蝶しのぶ(kocho)」をモチーフに、男女共同参画社会が進展する中で「輝く(shine)」未来を創造することを目指して名付けられています。